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SMI(サンデン経営研究所) メールマガジン 第8号

連載・自伝エッセイ[加藤幸男著]第6回(完)

■自伝エッセイ<新しい旅>を連載で掲載します。
この度、SMI加藤常務理事より、A4版8枚からなる自伝エッセイが寄稿されました。 この場をお借りして順次紹介してまいります。ご自身の教育・芸術に対する想いや、 米国留学時代の半生がありのままに記述されております。
皆さまからご好評いただいたこの連載も今回が最終回となります。SMI加藤常務 理事のご寄稿に、この場をお借りして、多大なる感謝を申し上げます。

●美術品のオークション
私は、ニューヨークに渡る前からアンリ・マティスのある言葉にくぎづけにされていました。 それは、1930年2月にニューヨーク滞在中のアンリ・マティスの「出来る事ならニュー ヨークに住みたいものだ、そこは、海のように広大で威厳があり、全く新しい世界である 人間の大きなエネルギーの放出がある」という言葉でした。後にメトロポリタン美術館通 いが激しくなってから、ニューヨークは、マティス作品に触れるには絶好の立地であること を知るに至りました。私は、メトロポリタン美術館で600ドルほどのドガの「踊り子」のブロ ンズ像(レプリカ)を購入した際に、メトロポリタン美術館の通常会員になり、館からの ニューズ・レターを送ってもらっていましたが、2008年時点ですらマティス作品の購入が ありました。
また、オークションは、パリからニューヨークに移って双方で 行うことも多いことを知りました。 2009年2月23日~25日 にパリのグラン・パレで「イヴ・サンローラン&ピエール・ベル ジェ・コレクション展」が開催されたというニュースが、ニュー ヨークにいる私の元にも飛び込んできました。グランパレでの プレビューでは、イブ・サンローランのアパルトマンを再現、3 日間で3万人の観客が訪れたというのがニュースの内容でし た。
(写真:著者による模写)

SMI(サンデン経営研究所) メールマガジン 第8号
SMI(サンデン経営研究所) メールマガジン 第8号

オークションは、クリスティーズ史上最大規模の会場で行われ、各セールに1500人を 超える人々が集まって盛大に行われたそうです。絵画、装飾美術、銀器、全てのカテゴ リーでオークション・レコードを出し、落札総額が3億4240万ユーロ(約415億円 当 時)と個人コレクションとしては史上最高記録をマークしました。フランスのオークションに 詳しい方によると、現在のフランスのオークションも、世界的傾向と同様、オークション落 札者は、アラブ人富裕層、アジア圏内ですと中国人の割合が増え、フランス人は、上部 の一握りの方が元気と言う状況だそうです。
これまでは、オークショニアが口頭で商品を説明し、ロットと商品名、エスティメート(予 想落札価格)が記入されている紙を貰うだけのシステムだったが、最近は、高級路線に なったためかカタログも10~15ユーロで1階のエントランスで売られている。特に電子 ボードの導入で、取引がより明確なった影響で、商品の高額化が著しいようです、いず れにしろフランス語必須は昔の儘、オークション会場は未だに業界人(プロ)が大多数で、 我々は、勿論、「およびじゃない」状態です。
しかし、アンリ・マティスの「黄水仙、青とバラ色の敷物」1 911年 油彩 キャンバス31.9×25.8cm 落札金額 約43億5100万円 といった珠玉の名品が登場する等す るので、私としては、目が離せません。作品を購入すること は、出来ませんが、作品から啓発されインスパイヤ―され ることが多いことを思うと推しの作家の作品は、その売買情 報すら貴重なものなのです。また、フランスでは、オークショ ニアは、国家資格を有し、オークションにかけられた作品に 対して10年間の責任期間があるそうで、芸術品に対する 厳密・厳格な姿勢が感じられるところです。
こういった海外での多くの美術作品との出会いが、私を啓 発し、作家研究にのめり込むことになってしまいました。副 産物は、自宅を埋め尽くす多くの模写作品です。
(写真:ご自宅の絵画)

(おわりに)
この小記事で、つたない筆ながら、わが師、平岡篤頼先生につい ても少しく書きましたが、今、私の日々の生活のモティベーションは、 早稲田の先生方の影響で形成されていることが解って参りました。
私が早稲田で最も影響をいただいた坂崎乙郎先生は美術評論、 安藤更生先生は仏教美術史、今井兼次先生は建築と専門も学部も 違いますが、共通するのは、それぞれの先生方は、その存在自体に 豊穣極まりない価値が感じられ、学ぶ者を差別せず、同じ視線で接 してくださり、大人とは何かを見せつけてくださったということです。
分かりやすく言うならば、それぞれの先生方が、是非このような人 になりたい、少しでも近づきたいと思わせる先生方だった事です。青 春の志を若き胸に湧き立たせつつ、私は、そういった先生方、すなわ ち学生と同じ視線に立ち、学生の可能性を信じてくださる先生方に憧 れに憧れたものです。
さて、わが母校早稲田大学のキャンパスには、大隈庭園奥にある 学生食堂に至る遊歩道の片隅に「戦没学生の碑」がひっそりと建て られております。碑の裏面には、第二次世界大戦で学園の教職員・ 学生4500名余が亡くなったことが記されております。また、併せて当 時の一女子学生の読んだ歌が刻まれております。ここにご紹介させ ていただきます。
『征く人の征き果てて 音絶えし校庭に 落ち葉舞うなり 黄に輝きて』
平和が無ければ学問も芸術も成り立ち得ません。戦争と いうものの終焉を切に切に祈念いたしております。(完)
(写真:ご自宅の絵画の数々)

SMI(サンデン経営研究所) メールマガジン 第8号
SMI(サンデン経営研究所) メールマガジン 第8号

編集者のつぶやき
■問題解決[品質管理ツールの使い道]って何?(第5回)
●効果の具合を検証する (データをみる、有意差検定、正規分布外れ)
さて、皆さま、今回は『編集者のつぶやき』「問題解決[品質管理ツールの使い道]って何?」の連 載?第5回です。前回の第4回では、対策や予防処置の案を考えて、ちゃん出来るのか検討する (対策内容、検査、プロセス、実行可能性検証、量産試作)でしたね。息切れしないように、かつ、本 メールマガジンの趣旨としての「ありのままで肩の凝らない読み物」として、真に役に立つ情報を発 信していくという方針で、あまり頑張らない程度にありのままに発信して参ります。
・まず、データって何?
さて、「データ」と言うとき、皆さんは何を思い浮かべますか? 最近は、ネットなどの媒体 がやたら騒ぎ立てるので画像やIoTデータも含めた「ビッグデータ」のことを「データ」と思っ ているひとも多いようですが、ここではそれはあえて対象としません。
つまり、身長とか体重とか、感染者数とか、人口 とか、何らかの意味をもった、数字のひとかたまり、 と思ってください。
例えば、小学校の理科の時間に、気温や温度を測って記録したり、ものの大きさや重さを測って 記録したり、そういった、世の中の物や現象を数 値化して、扱いやすく表記したものを「データ」とし ましょう。
(図:最近は「ビッグデータ」のことが データだと思っているひとも多い)

・データをみる、ってどういうこと?
コロナの時代になってから、新規感染者数のグラフを、テレビやネット上などで見 ることが多くなくなりましたね。このグラフが、データをみることの基本中の基本です ね。一番皆さんがなじみの深いのが、棒グラフと折れ線グラフでしょうね!


棒グラフは、データの数(多さ)を小さい順など に並べたものと、時系列で古い順に並べたもの との、大きく分けて2種類ありますね。


折れ線グラフは、やはり時系列で古い順に並べた もの(気温グラフのようなもの)と、比率やパーセント を現したものと、これも大きく分けて2種類あります ね。


散布図というグラフは、ある一定の法則(例え ば比例関係)の2つの項目を、X軸とY軸で(点な どでデータを)プロットして、その関係性を示した ものが、一番多いですかね。


実は、もっと色々なグラフがあるのですが、ここの説明では、基本的に上の3種類しか使いません。

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・正規分布ってな~に?
「 さーて、では、「有意差検定」というもののイメージを掴みま しょう。おっと、その前に、「正規分布」という考え方から理解し なければなりません。(統計学者さんという人たち?はなぜか カンタンなことを、ムズカシイ言葉で表現するのが好きらしく、 こまったものです)←ひとりごとです
皆さんはパチンコってやったことがありますか?銀色の球 を上の方に打って、落ちてくる玉がスポットに入ると当たり になるやつです。
この時のパチンコ玉の動きって、上から下に落ちるとき、 釘にあたって左右に振られますが、大体はある確率で中心 付近に集まりますね。これをグラフに書くと、こんな感じで す。この“釣り鐘型”の形自体を「正規分布」と言うんですね。
この「正規分布」をもっと詳しく調べたひとが いて、そのひとは、中心付近の±1σ(1シグ マ)という範囲に全体の約68%が、±2σ(2シ グマ)という範囲に全体の約95%が、 ±3σ (3シグマ)という範囲に全体の約99.7%が存 在すると言われています。
これって、そうです、試験の偏差値という考 え方の元ですね。世の中を変革するのは、 往々にして、裾野の上と下の0.3%の人たち ですね(個人の意見です)。

SMI(サンデン経営研究所) メールマガジン 第8号
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・有意差検定ってな~に?
さて、ここでやっと、本題にもどって「有意差検定」のお話です。

実は、先ほどまでの「正規分布」という考え 方を使うと、対策前後のAという状態とBとい う状態の2つが、本当に効果的に差がある のかどうか、統計的に判定ができます。
最近の例では、コロナ治療薬の治験の検 証例が、これに該当すると思われます。
モノづくりやある事象で、何か対策を打った 時にホントウに効果があるかどうかの判定 は、この手法をつかうと、カンタンに出ます。

「危険率(有意水準)5%で、有意差がある (ない)」とかデジタルに判定が出ますから、何も悩 む必要はありません。
これを「平均値の差の検定」という呼び方を する場合もあります。
細かい計算のやり方は、ネット上や YouTubeなど、いくらでも説明が出ています ので、それを参考にしたり、最近では入門者 向けの書籍もたくさんありますし、表計算の Excel上でもできますね。
薬事承認するお役人さんは、こういうこと、 判ってますかね?

・正規分布外れとは?
さて、最後に、「正規分布外れ」のお話です。
つまり、先ほどまでの「正規分布」という範囲 に収まらずに、メッチャクッチャ外れた、とんで もないヤツを、どうやって見つけるか?というお 話です。学校の正門で、登校する生徒たちの 髪型や服装・鞄などをチェックする、生徒指導 担当の先生みたいなものです。

モノづくりや品質管理では、そうい跳び抜けて 「変なヤツ」を見つけるだけでも、ずいぶんと安 定した感じになります。
こういう、「変なヤツ」を見つけるのに、もし「プ ロセス管理」という手法が効かないなら、もうこ れは「選別(スクリーニング)」という最後の手段 を使うしかないのですね。

なお、こういう「変なヤツ」 は、「正規確率紙」 や「ワイブル確率紙」という手法を使っても、カ ンタンに発見できますので、是非ご活用くださ い。(表計算Excel上でも簡単にできます)
(図:イメージ)

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※編集後記<編集者より>
●感動があるからこそ価値が認められる
さて、今回がSMI加藤常務理事よりご寄稿の、エッセイ<新しい旅>の最終回でした。 皆さま、いかがでしたか?
絵画や芸術のセンスがない編集者からしても、世の中は「モノ」の充実だけでは、 決して喜びや楽しさ・生きがいを生むものでなく、「コト」があって感動するからこそ、 その価値が認められるのだと思いました。
事業やシゴトに関しても、利益や収益・〇〇品質賞受賞・〇〇国際規格合格・市場 シェアなどの「モノ」を目標とした事業やシゴトは、それを完遂した(やり遂げた)時点 で、終わりに近づく?ことが多いですね? 実は、この時点での「モノ」というのは、 「コト」の必要条件を揃えただけなんですね。
それに反して、「コト」を目標とした事業やシゴトは、永遠に発展し継続するのでしょ う。たとえば、会社の経営方針に『ステークホルダー(利害関係者)の幸せ』や『社会 への貢献』『顧客の感動』『スマート商品』を謳った企業がその例です。
こんなことを言いたいがために、このメールマガジンもやっと第8号まできました。皆 さま、これからも引き続きご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

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Date:2023/02/01
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